新しい環境になかなか慣れない

住み慣れているはずの我が家が「他人の家」に感じる

認知症の症状が出ている人によくあるのが、「新しいことを嫌う」ということです。これはまだ症状の軽い、前兆の段階に人にも起こりうることです。

 

とある認知症患者さんの話です。入院していたのですが、正月ということで一旦帰宅しました。ところが、長期入院していたからか、久しぶりの自分の家なのにどうも落ち着かない様子。ずっと挙動不審で、最後には家に帰ると言い出したのです。

 

自分の家にいるのに「家に帰りたい」などと言い出したため、家族はびっくりして一時帰宅を打ち切って再度入院させたそうです。

 

長い間病院にいたせいで、この患者さんは病院を自分の家だと思ったようです。そして、自分の家は落ち着かない他人の家のように感じたのでしょう。

 

この話からわかるのは、認知症の人は新しいことを拒否するということです。健康な老人でも新しいことは渋ることが多いですが、さらに顕著になります。

 

愛着があるはずの我が家が「他人の家」のように感じてしまうのは、さびしいことです。

 

最近では、年を取った親を子供たちがたらいまわしにする事例もあるそうです。兄のところに数年、妹の家に数カ月、弟の家に数か月…といった形です。

 

これには老人は新しい環境に移して刺激を与えたほうがいい、という考えからかもしれませんが、それは違います。

 

老人にとっては、頻繁に家が変わる、つまり短期間に「新しい環境」が押し寄せてくるわけです。もし認知症のサインが現れている人なら、大きなストレスになるでしょう。